
- 株式会社日清製粉ウェルナ採用情報
- プロジェクトストーリー


早ゆでスパゲティ開発プロジェクト
“付加価値”が凝縮された
「早ゆでスパゲティ」
あくなき進化と挑戦の物語。
プロジェクト概要
1986年に「プロント」の名で発売され、今なお日清製粉ウェルナの代表製品として販売量を伸ばし続ける「マ・マー 早ゆでスパゲティ FineFast」。その裏には、大切な宝物をみがき込むようなたゆまない進化と、伸び続ける販売量に対応する生産能力拡大の歴史がある。“付加価値の塊”とも称される同製品を支える3人の当事者に語ってもらった。
1/100mm単位の調整で生まれた進化の歴史
- 木村:
- 「マ・マー 早ゆでスパゲティ FineFast」は、もともと1986年に「プロント」の名で、麺にV字型の切り込みを入れる画期的な手法で発売されました。私は2010年から同シリーズの開発に参画して、全ラインナップの開発やアップデートに携わってきました。その最初の仕事となったのが、2011年に発売した3枚羽の「風ぐるま形状」の早ゆでスパゲティです。
麺に入れる溝を風ぐるま形状にすることで、ゆで時間のさらなる短縮と本格食感の両立を実現するものでした。
以降、麺の太さが1.4mm、1.8mm、2.0mm、業務用2.2mmタイプのものや、サラダスパゲティなどへも風ぐるま形状を採用しました。とはいえ、単純に同じ形状の風ぐるまにすればいいわけではなく、細麺ではしっかりアルデンテに、太麺は少しもちっとさせたいといった方向性をふまえながら1/100mm単位での非常に繊細な調整を繰り返す必要がありました。あわせて、一定量にまとめて束ねる「結束タイプ」のパッケージにチャックをつけるなど、包装形態の開発も進めました。
とりわけ苦労したのが、2022年の全面リニューアルです。ゆで時間の短さを維持しつつ、丸形状の麺に全く遜色ない本格的な食感を実現し、さらに電子レンジ対応化に挑戦しました。電子レンジ調理は水の状態から温め始めるため調理時間が長くなります。それを短くしようと風ぐるまの羽を薄めの形状にすると鍋でゆでた時には柔らかくなりすぎてしまいます。解決するブレイクスルーとなったのが、「4枚羽」と乾燥技術の組合せです。それを短期間で全ての麺径に適用するのが非常に大変で、工場に全面協力してもらいながら、どうにか大規模リニューアルを実現しました。 - 信清:
- 現在の同製品は、いうなれば“付加価値の塊”です。早くゆでられ、おいしくて、便利な結束タイプでかつ保存用の開閉チャックも付く。必要なものを全部詰め込みました、というのがコンセプトです。その甲斐あって、ここ10年間は売上がずっと伸長しています。通常の製品は販売量に対して充分な生産キャパを持っているものですが、。同製品は販売の伸長にあわせて生産キャパを増やしても、販売がまたそれを数年で超えてくる稀有なシリーズとなっています。
早ゆでスパゲティの歴史や技術の詳細は下記をご覧ください。
立ちはだかる「生産能力増強」のミッション
- 信清:
- そんな製品であるため、常に「生産能力の増強」が逼迫した課題となっていました。私がグループリーダーとして本社の生産グループ赴任した時、すでに容易に実現ができる施策はなく、しっかりコストをかけて取り組む必要がありました。そこで、まずは増員を行って工場の稼働時間を延長し、あわせて設備投資と生産効率の向上を工場と協力しながら進めました。
- 寺田:
- 当時、私は生産技術研究所に勤務し、生産能力増強の案件に取り組んでいました。増産の検討をする中で見えたのが、この製品の肝である結束の包装設備などを改良することが生産ライン全体の能力増につながる、ということです。そこで、ボトルネックになっていたそれらの設備の構造を再構成することで、全体で10%の増能力を実現し、あわせて人力の工程を自動化することでさらに3%の増能力を達成しました。とはいえ、過去に実績のない設備構造だったため、工場の方に意見を聞きながら入念に設計を詰めなければいけない点で苦労しました。
- 信清:
- あわせて、早ゆでスパゲティの成長とともに、工場が不測の事態で稼働停止になった場合のリスクも大きくなっていました。そこで新たに取り組むことになったのが、早ゆでスパゲティ製品を当社のトルコ工場でも生産できる体制を作ることでした。

早ゆで・結束タイプのトルコ生産への道
- 寺田:
- もともと海外ではスパゲティを結束して販売することにあまりなじみがなく、結束する機械もほとんどないため、日本から機械を持ち込むことになりました。ただ同地では安全規制がとても厳しく、日本のものをそのまま持ち込むことができず、海外仕様に改造する必要がありました。また、現地の工場スタッフが慣れない機械を扱えるかも懸案事項でした。これらの課題を、信清さんや現地駐在員と密に連携しながら、なんとか解決に導いていきました。
- 木村:
- トルコでの生産にあたっては、現地の原料を使わないとコストメリットが出せないため、トルコ産のデュラム小麦を使用する必要がありました。ただ、日本で使用するカナダ産とトルコ産では品質が異なり、同じように作っては固さや弾力感が変わってしまいます。そのギャップを埋め、日本製とトルコ製を同品質にするべく、さまざまな製造条件を調整していきました。
- 信清:
- こうした取組みを積み重ねた結果、ついに2024年にトルコで早ゆでスパゲティの結束タイプの生産体制を確立しました。これは日清製粉ウェルナのパスタ事業にとって、大きな一歩と言えます。今後、同設備を活用しながら、生産量のさらなる拡大を図っていきます。

トルコを拠点に、いよいよ世界に打って出る!
- 信清:
- 今後はトルコを起点としながら、早ゆでスパゲティを世界市場に展開していく計画があり、実際に2025年から海外向け製品の生産もトルコ工場で始まります。簡便さと時短のニーズに応え、かつおいしくて高品質。そんな「マ・マー 早ゆでスパゲティ FineFast」ならではの付加価値が、EUやアメリカ、中東などでも支持をいただける可能性は、十分にあると考えています。また、EUなどでは環境意識が非常に高いため、ゆで時間短縮や電子レンジ調理がCO₂排出量の低減に貢献する点も大きな強みとなります。
- 木村:
- 国によってニーズも変わってくるので、現地の声をきちんと聞きながら、その国ごとに最適な早ゆでスパゲティを作っていきたいです。
- 信清:
- 私は海外旅行などで現地のパスタ製品をリサーチするのがライフワークでもあるので、ぜひその国で何が付加価値になるのかを、しっかりつかんで臨みたいと思います。
- 寺田:
- 今後、海外に早ゆでスパゲティを展開するとなると、さらに生産能力を向上させなければなりません。現職の立場として、どこでどれだけ生産するかをしっかり調整・管理しながら、販売数量に負けない生産体制を整えていきます。
- 信清:
- 安全・安心はもちろん重要ですが、何よりも食べ物は、人を笑顔にできます。その点、日本の多くの人たちにこの製品が届き、喜んでいただいていることが、とても幸せです。だからこそ、この製品をさらに海外へ広げ、世界中の人々が笑顔になるのを見たいなと思っています。そのために、安定供給やなるべく手頃な価格でお届けすることを、今後も突き詰めていきます。


トルコ日清製粉 A.S
取締役社長 信清 良太のぶきよ りょうた
2004年入社。館林工場、日清製粉グループ本社 技術本部技術部、名古屋工場、プロダクトマネジメント統括部第二部生産グループを経て現職。

株式会社日清製粉ウェルナ
商品開発本部 商品開発統括 第二部開発グループ 主任研究員 木村 竜介きむら りゅうすけ
2008年入社。開発センター食品研究所、開発センター、プロダクトマネジメント統括部 第二部開発グループ、日清製粉グループ本社 基礎研究所 微生物制御研究室を経て現職。

株式会社日清製粉ウェルナ
生産本部 生産統括部 第二グループ 寺田 健悟てらだ けんご
2017年入社。日清製粉グループ本社 生産技術研究所を経て現職。