プロジェクトストーリー

惣菜工場の自動化プロジェクト
中食・惣菜市場の中で
“競争優位性”を生み出す
自動化技術に挑戦する。

プロジェクト概要

日清製粉グループの中食・惣菜事業では、従来から働き手不足を見据えた工場の自動化プロジェクトを推進し、生産の効率化だけでなく、誰もが働きやすい環境の整備を目指している。そうした中、2022年7月に設立したグループの中食・惣菜事業を統括する新会社「日清製粉デリカフロンティア」が中心となり、グループ全体での惣菜工場の自動化プロジェクトが進んでいる。同プロジェクトで主導的な立場を担う佐藤にプロジェクトの進捗や手応え、今後の展望などについて語ってもらった。

グループ各社とのパイプ役を担い、将来を見据えた省力化・省人化を推進

日清製粉グループの中食・惣菜事業は、女性の社会進出や高齢化などの社会環境の変化を背景とした消費者の多様なニーズに応えるため、全国25拠点パート社員も含めて1万人以上の従業員が生産に取り組み、スーパー・コンビニ向けに多品種の製品を提供しています。そうした中、今後の働き手不足を見据えて生産の自動化プロジェクトを推進しており、将来的に約半分の労働力でも現在と同等以上の生産能力を省力化・省人化によって実現できないかという検討をしています。この自動化プロジェクトで主導的な役割を担っているのが、私の所属する日清製粉デリカフロンティアの生産技術開発部です。私の担当は、各工場から吸い上げたニーズを日清製粉グループ本社の技術部・研究所や外部業者につなぐパイプ役としてプロジェクト全体をリードしながら、具体的な技術開発推進のサポートをすることにあります。プロジェクトの推進にあたってはグループ内の連携が不可欠ですので、傘下の中食・惣菜3社およびグループ本社と自動化推進に関する進捗合同会議を定期的に開催し、取り組みの状況や課題、方向性を共有しています。グループ本社の開発力や技術調査力、日清エンジニアリングの工場設計力や蓄積したノウハウ、さらには外部メーカーとのオープンイノベーションの成果なども活用しながら、プロジェクトを推進しています。

2023年1月現在
写真:商談シーン
写真:パソコンを指さすシーン

求められているのは、“現場目線”の装置・システム

惣菜を完成させるには、形の不揃いな食材を迅速かつ見栄え良く盛り付けるなどの高度な手作業が必要になります。そうした作業の一つひとつを自動化するためには、細かな調整やテストが必要になりますが、そういった手作業の部分をどうにか自動化できないか検討しています。一例を挙げると、従来の“揚げ出し豆腐の盛り付け”では、トレイにゼラチン状のタレを手作業で敷き、その上に揚げ出し豆腐を盛り付ける工程を10人程度で作業していました。これらの作業にはコツが必要な上、作業負担も大きいという課題がありました。そこで「タレの自動充填機」を新たに設計・開発して工場に導入し、また、自動充填機のノズルの取り付けや洗浄も1人で作業できるようにしました。自動化を推進するためのポイントは、単純に機械を導入して効率化するということではなく、導入する技術が「熟練した従業員でなければ使えない」「手先が器用でなければできない」といった“人を選ぶ技術”にならないように配慮することです。また、日頃から工場の従業員の方々とのコミュニケーションを大切にしていて、ざっくばらんな会話の中で聞いた作業の困りごとや悩みがヒントになって、自動化技術の開発につながるケースが多くあります。そのように常に現場目線を大切にして、工場で働く方々との密なコミュニケーションの中で共感を得ながら着実に自動化を推進するよう心がけています。

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現場の意見も積極的に取り入れて、より使いやすいシステムを追求

最近では、工場内の各作業工程の状況をリアルタイムでモニタに表示する「生産進捗表示システム」を開発しました。モニタに表示される項目など各拠点が希望する仕様が異なっていただけでなく、短期間での導入を求められたため、とても苦戦し、技術の開発・導入の難しさを痛感しました。そうした中でも、協力会社や中食・惣菜会社の関係メンバーに対して丁寧に説明を行いながら巻き込んでいき、内容やスケジュール等の折り合いをつけながら検討を重ねたことで早期に実現できました。また、導入後にも定期的に現場の従業員に使い勝手や新たな要望などを聞いて設計を見直しており、その結果、新しいシステムはスムーズに現場で運用されています。自動化を進める上では苦労もありますが、工場の従業員の方々に負荷軽減や効率化などを実感していただける技術を一つひとつ提供していくことが、省人化・省力化の目標達成への近道だと感じています。

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自動化の推進体制を強化するとともに、デジタル化も加速させていきたい

大きな目標の達成に向かって日々取り組む中で、自分一人でできることには限界があり、周囲や関係者との連携の大切さを改めて感じています。省力化・省人化を迅速かつ効率的に実現していくためには、それぞれの関係者が緊密に連携をとり、諦めずに着実に成功を積み重ねられるような体制が不可欠です。そうした体制づくりをリードしながらプロジェクトを進められるような存在になっていければと思っています。また、工場の省力化・省人化をさらに加速させるためには、デジタル化にも取り組んでいく必要があると認識しています。工場によっては紙による記入やパソコンへの転記作業などの手間がかかる管理作業が実はまだまだ多く残っています。その課題を解決すべく、ゆくゆくはデジタル化推進に特化したチームを創り上げて、自動化と並行して積極的に取り組んでいきたいと考えています。

Profile

株式会社日清製粉デリカフロンティア
生産技術開発部 佐藤 卓也さとう たくや

2010年入社。同年4月、グループ本社生産技術研究所に着任。その後、日清製粉ウェルナ館林工場、グループ本社の技術本部技術部などを経て、2019年から中食・惣菜3社の生産技術の開発・導入等に取り組む。