石井孝典 水田成保 大村雅人石井孝典 水田成保 大村雅人
石井孝典石井孝典 水田成保水田成保 大村雅人大村雅人
プロジェクトの概要と現在の仕事内容
小麦粉の革命。
手軽さを可能にした
小容量ボトルタイプ。

小麦粉市場に「キッチンで他の調味料と一緒に置けて、いつでも手軽に使える」という新たな革命をもたらした、小容量ボトルタイプ「クッキングフラワー」。発売後は、その便利さに「どうして今までなかったのか」と疑ってしまうくらい、定番商品への階段を上り始めた。しかし、その裏では新たな市場ニーズの調査に翻弄した商品企画の担当者や、前例のないボトル製作や顆粒タイプの小麦粉開発に苦悩した生産担当者など、様々な社員の長期間にわたる試行錯誤があった。今回は、このプロジェクトの商品企画を担当した水田と、開発担当の大村、生産担当の石井の3名に集まってもらい、当時の想いを語ってもらった。

プロジェクトの背景と関わった人たち

最初に、このプロジェクトが始まった背景と当時の役割について教えてください。
水田
今、惣菜や冷凍食品など手軽な食品がとても充実している時代です。そのため、家庭で料理をする機会が減ったり、若い人は家に小麦粉自体を置いていなかったり、小麦粉市場は年々落ち込んでいました。日清製粉ウェルナの薄力小麦粉「フラワー」も同様です。そうした中、市場調査を重ねていくと、小容量のニーズがあるのではないかと考えたのが始まりでした。ただ、社内会議でなかなかアイデアが通らず、あらゆる角度から小麦粉の可能性について調査。様々なデータをそろえることで、ようやく半年後に企画を通すことができました。
大村
プロジェクトがスタートした2011年秋頃、私は別部署に所属していました。それが2013年の4月に異動になり、この新商品のボトル容器と中に入れる小麦粉の開発を担当することになったのです。別部署にいる頃から、すごく良いアイデアだなと期待していたので、担当になると決まったときは良い製品を開発しなければという責任感でいっぱいでした。
石井
私は開発スタート時はまだ入社さえしていなくて、2014年8月から小麦粉を作る副担当として携わることになりました。その後、包装担当へ。この商品は日清製粉ウェルナとして初めて小麦粉の容器にボトルを採用しました。前例がない中で、うまく容器に充填できるものなのか不安もありましたが、できる限りのことを取り組もうという気持ちでした。
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ヒット商品になるまでの道のり

まったく前例がない商品の開発。そこにはどんな苦労があったのでしょうか?
水田
もともと、小麦粉は課題が多い商品でした。粉が舞ったり、ダマになってしまったり、戸棚の奥にしまいこんで賞味期限を過ぎてしまったり。でも、この商品が開発できれば、そうした課題も全て解決できるのではと考えていました。そのため、普通の小麦粉を容器に入れ替えるだけではダメでしたし、今まで見たことがないものを開発するため、完成後のイメージの共有が難しかったですね。発売までに3年半もかかりました。
大村
容器と中身の小麦粉は一心同体で、形状を考えると同時に粉が有する性質についても考える必要がありました。小麦粉を振り出す穴のサイズによって、出しやすさが変わってきますから。両立して進めないといけなかったことが、開発担当としては一番難しかったですね。そのため、容器は約30パターンのプロトタイプを作り、モニター調査を重ねて現在の形状にたどり着きました。中身の小麦粉は、副原料を一切使わずに通常の小麦粉を加工して、粒が大きくサラサラしたものに。生産技術研究所と本社の生産担当と工場で協力して、100種類以上のサンプルを作りました。
水田
小麦粉という何千年前からあるものを進化させるのですから一筋縄ではいきません。しかし、今回さらに大変だったのは生産です。どんなに素晴らしい製品を開発しても、工場で品質もコストもクリアしたものを生産できなければ、商品として世の中にでることはないですからね。
石井
今回は生産方法を見つけ出すまでが、本当に苦労しました。とくに、小麦粉の充填。一つずつ小麦粉をボトル容器に充填させるのですが、サラサラした小麦粉は完全に止まらなくて流れてしまうのです。すると、生産ライン自体が止まることになってしまう。そこで、自社工場内に生産ラインを新規で立ち上げ、様々なシャッター機構を試しながらゼロから製法をつくりあげる必要がありました。
大村
課題が多く、解決に苦慮する一方で、発売日はすでに決まっていて、営業はもう商談を進めているし、工場もかなりプレッシャーがありましたよね?
石井
本当に何度も諦めそうになりました(笑)。しかし、商品開発チームからは「製品の品質は絶対、妥協したくない」と言われるし、私たちも生産の意地がある。最後はもう執念でしたね。
水田
でも、日清製粉ウェルナの技術者たちなら、なんとかしてくれると信じてましたから。そして、2015年2月の発売日の直前まで課題と向き合っていただき、解決策を見出してくれました。
いよいよ商品の販売。どのような結果でしたか?
水田
じつは最初は売れませんでした。それが5月にテレビCMを放送すると、いきなり売れて。それもスーパーで一時、品薄になってしまうくらい。お客様が買いたいと思っているのに、お店にないっていうのは、メーカーとしてあってはいけないこと。そこから、すごい生産体制でした。
石井
当初の10倍以上を製造することになり、もう工場の人員だけではどうしようもない状況になって。それで本社に掛け合い、部署関係なく生産ラインに入ってもらいました。本社からも大勢の方に応援に来ていただいて。1日に6人から7人のシフトを組んで、生産量を増やしましたね。
商品のヒットを受け、社内や工場ではどんな変化がありましたか?
水田
お客様相談室にもお褒めの声を多くいただきました。「よく出してくれた」とか「なんで今まで作ってくれなかったの?」とか。「ありがとう」と言う声をいただけたのが、一番嬉しかったですね。
石井
実際に作るのは大変でしたけれど、スーパーでたくさん並んで売れているのを見ると嬉しいですよね。
水田
社内が元気になりましたね。会社として事業として、もっと挑戦できることがあるのではと勇気づけられたという声もありました。
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改めて感じる、日清製粉ウェルナの魅力

このプロジェクトや普段の仕事を通じて感じたこの日清製粉ウェルナの魅力は何ですか?
石井
このプロジェクトに参加したとき、私は入社2年目でした。知識も経験も浅い中で、このような大きなプロジェクトに携われたことは成長につながったと思います。自分が考えた改善策などの提案も柔軟に受け入れてもらえるというチャレンジングな社風も魅力ですね。
大村
頑張った成果や積み上げてきた想いが商品となり、たくさんのお客様に喜んでもらえる。生みの苦しみはありますが、それがこの仕事の一番の喜びですね。また、商品の細部まで自分の考えやこだわりを加えられるのが、大きなやりがいです。
水田
誰もがそれぞれのこだわりを持って取り組むこと。時には厳しい意見を言い合えること。良い商品を作る上で、様々な部署の人と協力しながら進められることが魅力です。スタート当初は小さなプロジェクトでしたが、そういった社風が大きなプロジェクトを生み、今回の商品を成功へと導いてくれたのだと思います。
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プロジェクトの未来、今後の目標

最後に、今後のプロジェクトの行方や商品への期待などを聞かせてください。
石井
国内だけでなく、海外にも広がっていく商品になってもらえたらと思います。
大村
粉が舞わない、取り出し口が2つあるなど、日本人独特のきめ細かい気遣いが活きた商品だと思います。外国の方に日清製粉ウェルナと言えば「クッキングフラワー」と言われるような、世界基準の定番商品に成長してもらいたいですね。
水田
確かに日経MJからヒット賞をもらった時、審査員の方にも「こんなに日本人らしい商品はない」と言われました。国によって需要も違いますが、日本発信の新しい小麦粉の使い方が広がっていくことで、小麦粉の価値が見出されるのが夢ですね。
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