プロジェクトストーリー

SELVAGGIOシリーズ開発プロジェクト
作り手の情熱に応え、
インスピレーションを与える
“野趣的な小麦粉”を開発する。

プロジェクト概要

脈々と受け継がれるパン・菓子業界の歴史のなかで、職人たちはお客様の喜んでいる姿を思い浮かべながら、新たなおいしさや個性を追求し、日々挑み続けている。日清製粉は、そうした職人たちの情熱に応えるために、伝統的な欧州スタイルの製粉方法を再現した小麦粉である「SELVAGGIO(セルヴァッジオ)」を開発。パン・菓子職人にインスピレーションを与え、かつてない“野趣的な味わい”と、独特な食感で新たな食シーンを切り拓くことを目指している。SELVAGGIOの開発プロジェクトに営業担当者として参画した柴田に開発の経緯や今後の展望などについて語ってもらった。

パン・菓子職人との“対話”から生まれた「SELVAGGIO(セルヴァッジオ)」

当社は、発売50周年を越えたフランスパン用粉「リスドオル」を筆頭に、パン・菓子職人の方々に向けたさまざまな小麦粉を開発・提供してきました。こうした歴史の中で築き上げてきたパン・菓子職人との関係性を未来に紡いでいくため、たえまない“対話”をしていくことが当社のありたい姿です。その一方で、パン・菓子職人からは、当社が業界最大手であるがゆえに“平均的かつ大量生産”というイメージを持たれていると社内でも認識していました。そんななかで、後にプロジェクトリーダーとなる先輩が欧州の製粉会社を訪問した時に得た学びと、「リスドオル」についての交流会などで分かった次世代のパン・菓子職人の感性が融合し、“職人のインスピレーションを昂らせる小麦粉”という新しい製品のコンセプトが固まりました。つまり、イタリア語で“野趣的な”という意味をもつ「SELVAGGIO」の開発は、未来の職人と関係性を紡いでいくための“軸”となる製品を目指したのです。

写真:インタビュー風景

開発、製造、品質管理、営業の“横断プロジェクト”を組成

2020年2月からスタートした「SELVAGGIO」の開発は、開発(二次加工)、製造、品質管理、営業の各セクション横断プロジェクトとしてスタートし、私は営業セクション選出メンバーとして、プロジェクトオーナー兼リーダーを支える役割を担いました。開発を進めるなかで、小麦粉の品質を追求するだけでなく、小麦粉のブランド化を目指しましたが、これは非常にチャレンジングなテーマで、難しさと同時にやりがいを感じました。また、これまでの当社では完成したものをプッシュ型で提案していくことがほとんどでしたが、今回はパン・菓子職人との対話を通じて品質やブランド力を磨き上げていきました。こうしたアプローチも新たなチャレンジでしたし、ある職人の方からは「業界最大手の日清製粉さんがこういった新機軸の小麦粉を出すのは珍しいですね」という言葉をいただきました。

写真:商談シーン
写真:手元のパンフレット

欧州スタイルの“粒の粗さ”がかつてない野趣的な味わいを生み出す

「SELVAGGIO」の最大の特長は、小麦粉の“粒の粗さ”にあります。日本では、小麦の中心部を使用した“白い小麦粉”が好まれてきたという歴史がありますが、近年は業界横断的に“手作り”へのニーズが高まっており、決して白いものだけが良いものではないという価値観が生まれてきました。その点も踏まえて、「SELVAGGIO」は小麦の外側の部分まで使用しており、それによってパンの用途では歯切れやくちどけが良くなり、野趣的な味わいを生み出します。また、粒度の粗い粉は、深い味わいを生み出す“長時間発酵”にも適しています。さらに、最近は小麦粉の袋を店内の装飾に使用している店もあるので製品パッケージにもこだわり、今後も長く愛される小麦粉になってほしいという想いを込めて、プロジェクトがスタートした年である「SINCE2020」を入れています。

写真:製品パッケージ

難しい開発を可能にした“パッション”と“組織力”

2021年3月の発売開始後は、製造したパンの商品名に「SELVAGGIO」という名前を入れていただいたり、SNSにパッケージ写真を掲載していただいていたりと、多くの職人の方々からご好評をいただいています。本来は“黒子”である小麦粉を前面に押し出していただけていることについては大変うれしく思っています。

今回の開発プロジェクトを通じて、日清製粉グループの強みは“パッション”と“組織力”にあるとあらためて感じました。これまで日清製粉は技術や品質を極めていくこと、すなわち“深化”を得意としてきましたが、「SELVAGGIO」の開発は“探索”の連続でした。その過程では、従来の製粉方法の概念を覆すような手法を導入し、それを製品として具現化するために営業・製造・開発(二次加工)が同じゴールを目指して、情熱を持ち、協働を重ね、お客様とともに製品を磨き上げていきました。こうしたパッションと組織力、そして、これまでに信頼関係を築いてきた多くのお客様からの支援があったからこそ「SELVAGGIO」が生み出せた、そう強く実感しています。

現在は、「SELVAGGIO」をさらに広げていくための取り組みとして、当社が業務用のお客様向けに運営する会員制インターネットサイトの「創・食Club」に専用ぺージを設けて、特長を理解していただくことに努めています。また、その世界観をお伝えしたいという想いから、業務用小麦粉には珍しく30秒程度のアタックムービー(製品紹介動画)を作成しました。

アタックムービーの画面
写真:パン

「SELVAGGIO」を軸により多くの“おいしい”を届けていきたい

「SELVAGGIO」は、欧州の製粉会社から得た学びを日本の製粉工場での製造に落とし込んで誕生した小麦粉です。言葉にすると簡単に聞こえるかもしれませんが、実際に起案したプロジェクトオーナーの想いは非常に熱いものがあったと感じています。そして、開発では「異なるもの同士を組み合わせて新たな価値を創る」、「理論と実践の往来」という言葉・価値観が頻繁にチームメンバーの中で交わされ、私自身もこのプロジェクトから非常に多くのことを学びました。

「SELVAGGIO」は、当社が継続してきた職人の皆様との対話・協働という流れを汲み、進化させていくための鍵になる製品だと捉えています。日清製粉には多彩な小麦粉のラインアップや小麦粉以外の穀類がそろっているので、今後は「SELVAGGIO」を軸とした幅広い提案を行い、パン・菓子職人および消費者の皆様にとっての「おいしい」をより多く届けられるよう尽力していきたいと考えています。

写真:パン

Profile

写真:柴田 洋佑

日清製粉株式会社
営業本部 広域営業部 係長 柴田 洋佑しばた ようすけ

2011年入社。同年4月に名古屋営業部に着任。2016年から流通営業部(現在の広域営業部)に異動。以来、コンビニエンスストア向けにパンや菓子用小麦粉の営業活動に従事。